ターミネーターのからくり

非科学者のための、作物の第二次世代種子を抹殺する恐るべき特許の説明

How the Terminator terminates:
an explanation for the non-scientist of a remarkable patent for killing
second generation seeds of crop plants

原文は http://www.bio.indiana.edu/people/terminator.html にあります

著者

Martha L. Crouch, Associate Professor of Biology
Indiana University
Bloomington, Indiana, USA
crouch@indiana.edu

この論文は、情報を提供し、議論を引き起こすためのエッセイのシリーズの一つです。著者は、読者が彼女のターミネーターの特許の解釈について質問やコメントがありましたら、直接彼女に連絡を取ることを歓迎しています。

改定版 1998

不定期刊行物

The Edmonds Institute
20319-92nd Avenue West
Edmonds, Washington 98020
USA

下記の団体の資金援助によって出版されました

The HKH Foundation
The Funding Exchange
C.S. Fund


始めに

遺伝子操作された生物 (Genetically modified organisms: GMOs) は農業では既に商業ベースになっている。例えば1998年には1千8百万エーカー以上のアメリカの耕地に、1996年に始めて紹介されたラウンドアップレディ(Roundup Ready®)の大豆が植え付けられると予想されている(Horstmeier 1998)。この大豆はモンサント株式会社(Monsanto Corporation)によって開発されたもので、これまたモンサントによって製造された除草剤のグリフォセエト(glyphosate)、商標名ラウンドアップ(Roundup®)に耐性を持つバクテリアの遺伝子を組み込んだものである。ラウンドアップレディの大豆が紹介されてからたったの2年後には、アメリカで植え付けられたコーンと大豆の30%以上、カナダでは50%近くのカノーラ(canola)が、除草剤または殺虫剤耐性を持たせるように遺伝子操作されたものであった。

過去20年にわたってバイオテクノロジーに大きな投資を続けてきたモンサントや他の会社は、希望だけで、売る製品が無い長年の状態から抜け出て、ようやく利潤を上げ始めた。そしてそれらの会社は特許を取得した種子の権利をしっかりと守っている。最近のモンサントのファームジャーナル(Farm Journal ,Monsanto 1997)で、モンサントは全面広告を出し、農家にモンサントの知的所有権を侵害しないように求めている。

バイオテクノロジーを使って、優れた作物を農家に提供できるようになるには、巨額の投資と長い年月が必要です。そして将来のバイオテクノロジーへの投資は、これらの作物によって産み出された利潤を(バイオテクノロジーの)会社も享受できるかどうかにかかっています。もし農家が特許取得済みの種を取っておいて、また植え付けるとしたらどうなるか考えてみて下さい。第一に、すべての会社にとって、 高収量、高品質それに耐干ばつの性質を持つ種子の開発など、未来への技術への投資の魅力が無くなります、、、、、端的に言って、特許が取得された種子を取っておいて、再び植え付ける少数の農家は、将来独創的なバイオテクノロジーがすべての農家に提供されることを阻害するものです。そしてそれは誰にとってもフェアではありません。

将来、遺伝子操作した作物の種子会社と政府の種子製造所は、知的所有権を侵害しないよう求める必要は無くなるかもしれない。もし最近の特許で描かれたプロセスが現実となり、広く使われるようになれば、改良された作物の保護は、生物学的に作物そのものに組み込まれるようになる。

19983月、将来モンサントに買収されることになるデルタ・アンド・パイン・ランド社(Delta and Pine Land Company)という種子会社は、アメリカの農業省(United States Department of Agriculture)と共同で、作物の遺伝子発現の制御(Control of Plant Gene Expression)というアメリカの特許 5,723,765 を取得した。この特許は広範で、多くの応用範囲を含んでいるが、特許取得者が特に重要視しているのは、作物が第二世代では自ら種子を殺す機構で、それが出来れば、農家が種子を取っておいて再び植え付けることは不可能になる。

RAFIRural Advancement Foundation International)によって「ターミネーターテクノロジー (Terminator Technology)」と名付けられたこの「発明」は、社会、経済それに環境に及ぼす深刻な影響が、研究者のグループによって調べられた。(RAFI 1998) しかしながら、ターミネーターの影響の多くは、この発明の背後の科学を理解しないと、十分に把握することは出来ない。この報告書で著者はターミネーターテクノロジーを特定の作物に組み込むプロセスの概要を明らかにし、そのプロセスを説明した後、著者はどの過程に危険性が潜んでいるか議論するものである。


概要

ターミネーターのプロセスを説明する助けとして、特許でカバーされた無数の可能性のうち、ただ一つに限って説明することとする。私が選んだ一例は、過去に遺伝子操作されて、除草剤に対する耐性という特殊な性質をもった綿の種子である。私の議論では、除草剤に対する耐性を持った種子の子孫が種子会社に利益なしに使われないようにするために、会社は綿をターミネーターでさらに操作したものと推測した。ターミネーター綿はまだ市場に現れていないので、何といっても、これはあくまで推測に過ぎないが、少なくともターミネーターの特許の書類では、すべてのプロセスは機能するものである。

綿はハイブリッド(hybrid)の種子としては売られないことが多い。したがって、ターミネーターの保護機構を使うには不適な対象である。対照的にコーンは通常ハイブリッドとして植え付けられるので、改良された品種の何らかの保護処置が既に取られている。これはハイブリッドの第一世代は遺伝的に極めて均一であり、どちらの親も単独では持っていない、求められるべき性質を持つべく増殖されているからである。しかしながら、これらのハイブリッドが種子を作ると、交配の際に遺伝子の入れ替えが起きるので、第二世代には極めてばらつきがある。産業化された農業では、作物は機械化に対応しなければならないので、均一性が要求される。したがって、コーンを作る産業化された農家は、新しい種子を毎年購入する。

何種類かの主要作物で、通常ハイブリッドの種子から育てられないものが幾つかある。これらは小麦、米、大豆、それに綿を含む。農家は種を取っておき、数年間、世界のあるところではもっと長い間、種子会社に新しい種子を買いに戻ってこないこともある。

もし今ハイブリッドでない種子を使っている人々が、毎年新しい種子を買わなければならないとしたら、それは種子会社の収益に大きく貢献するであろう。これがターミネーターテクノロジーを開発した主要な理由であろう。

ターミネーターの開発には他の理由もあるであろう。一つの理由はターミネーターの効果がハイブリッド化と違うことに関連しているかもしれない。ターミネーターが使われる時、第二世代は殺される。ハイブリッド化では第二世代は、ばらつきがあるけれど生きている。ハイブリッドの第一世代にある遺伝子のすべては、予測出来ない組み合わせではあるけれど、第二世代にも存在する。従って、ハイブリッドの遺伝子を使って独自に作物を作りたい種子研究者は、それらの作物から遺伝子を取り出すことが出来る。ターミネーターを使えば、私の例に上げた、除草剤耐性の遺伝子のような特別の遺伝子は、簡単に競争相手の手に入って使われることはない。

遺伝子操作された改良品種にターミネーターを使う理由としてよく挙げられる他の理由は、GMOが環境に「逃げ出す」ことを防ぐためである。多くの遺伝子工学の批評家はGMOを環境に放つことは、生態系への影響や繁殖の度合いは予測することが難しいとして問題だとしている。(Rissler and Mellon 1996)第二世代が死滅するとすれば、この問題も一挙に回避することが出来る。

 

おおざっぱなスケッチと見直し

ターミネーターは複雑なプロセスであり、植物の一生の間に如何に遺伝子がどのように働くかの基本的な情報を、事前に見直しておくことは理解を助ける。分子生物学に造詣の深い読者は、一般的な説明と、それに続く単純化された生物学上のプロセスの基本の見直しをスキップされて、ターミネーターテクノロジーの詳細に進まれてもかまわない。


綿におけるターミネーターの一般的な説明

綿の例では、目標はほとんど成熟するまで正常に生育する品種を開発することである。そして、その時になって始めて毒が胚芽で生成され、次世代の全種子を殺すのである。

このシステムは3つの主要要素からなる。

  1. 発育の後期に、種子以外は殺さず、種子だけをを殺す毒を生成する遺伝子
  2. 種子だけを殺す毒を持った、遺伝子操作された遺伝子を含んだ綿を、種子会社が種子を殺さずに数世代育てる方法   -   これは農家に種子を売るに十分な量を生産するのに必要である
  3. 第二世代が殺されるように、農家によって植え付けられた後、種子だけを殺す遺伝子を活性化する方法

これら3つの使命はいくつもの遺伝子を操作することにより達成される。そしてそれらの遺伝子は、通常の繁殖の際に遺伝していくように、永久的に作物に組み込まれる。


単純化された生物学的なプロセスの基本

花粉によって卵子に届けられた精子によって受精された単細胞の卵子として、植物は生命を始める。この最初の細胞は何度も分裂を繰り返し、その種に特異の組織や臓器を形成する。この単細胞から大人になる過程を成長という。成長が進むにつれ、細胞はお互いに違うようになり、変わってくる。例えば、葉の中の細胞は根の中の細胞とは明らかに違ってくる。違いの多くは細胞の中で作られる蛋白質の種類と量に起因している。なぜなら細胞の多くの構造は蛋白質で構成されていて、細胞内での活動は蛋白質である酵素によって影響されているからである。従って、成長を研究する科学者は蛋白質のパターンを説明するのに多大な努力を払う。

どの蛋白質がどの組織と臓器に存在するかを調べることにより、生物学者は各細胞は数千の異なった蛋白質を含むことが分かったが、ほとんどの蛋白質は細胞中ではきわめて微量である。数百種の蛋白質はかなりの量があり、数種類はとても量が多い。それに蛋白質のいくつかはすべての細胞の中にあって、成長する過程で常に存在するのに対し、他の蛋白質はある特定の組織、またはある特定の時間に存在する。例えば、パン生地の弾力性の元になっているグルテンの蛋白質は、種子の中にだけ存在し、しかも大量にそこに存在する。対照的に、エネルギーを取り出す第一ステップとしてグルコースを分解する酵素は、すべての生きている細胞に存在するが、量は少ない。

ある蛋白質は、温度の上昇のような、環境の変化に対応して作られる。したがって、ある特定の作物の一生の間に存在するかもしれないし、存在しないかもしれない。細胞がどの種類の蛋白質がどれだけ存在するかをコントロールする最も一般的な方法は、どの遺伝子が働いているかをコントローすることである。(Rosenfeld et al. 1983) 蛋白質は異なった種類のアミノ酸の鎖であり、アミノ酸の順番と鎖の長さは、各種の蛋白質毎に特異である。各アミノ酸の特異な序列は、細胞の核にある染色体のコードによって特定される。コードはDNAから成り立っている。ここでの議論の目的上、遺伝子とは特定の蛋白質のコードを含むDNAの一部であるとする。遺伝子は、染色体の長さ方向の特定の場所に存在する。

ほとんどの細胞は、一組は精子、もう一組は卵子からくる二種類の完全な遺伝子の組み合わせを持っていることが分かった。そしてその遺伝子は、全ての細胞と器官で作られ、個々の植物が一生の間に必要とする蛋白質のコードを持っている。しかしながら、ある特定の細胞にとって必要な蛋白質の遺伝子だけが、その細胞では使われる。これらは活性遺伝子(active genes)である。他の遺伝子は染色体の中にあって、その細胞では不活性であるが、その植物のどこかでは活動している。

遺伝子が活性か不活性かは、細胞の中にあるDNAと他の分子との複雑な関わりによって決定される。細かく言えば、遺伝子は幾つかの部分に分けられる。一つ目の部分はある長さのDNAで、プロモーター(promoter)と呼ばれ、細胞または環境と相関活動をする役目をする。二つ目は、蛋白質の中のアミノ酸の順番のコードを実際に持ち、コーディング シーケンス(coding sequence)と呼ばれる。遺伝子が活性の時、プロモーターは他の分子と相関活動して、コーディング シーケンスが複雑なプロセスをへて、特定の蛋白質を合成出来るようにする。

遺伝子工学とは、遺伝子を変えることにより、生体中の蛋白質の配列を操作することと定義できる。それらの蛋白質が違った時期に出来るか、異なった量できるように、新しい遺伝子が加えられるか、既存の遺伝子が加工される。

遺伝子のコードは全ての生物種で似通っているので、例えば、ネズミから取り出した遺伝子はコーンでも働く。それから、あるコーディング システムから取り出されたプロモーターを、別のコーディング システムの前に付け、いつまたはどこで蛋白質が出来るかを変えることもできる。例えば、ミルクの主要蛋白質であるカゼイン(casein)のプロモーターを取り出して、人間の成長ホルモンのコーディング シーケンスの前に付け加えると、乳牛のミルクの中にカゼインの代わりに人間の成長ホルモンが生産される。もちろん人間の成長ホルモンを作るには、加工された遺伝子は牛の遺伝物質の中に組み込まれなければならない。それには多くの方法があるが、私はここでは詳細には触れない。

遺伝子を生物種の間で動かすことを移転(transformation)と呼び、結果は遺伝子移転生物(transgenic organism)という。最近、遺伝子移転生物は遺伝子改造生物(genetically modified organisms)またはGMOと呼ばれる。


ターミネーター技術の詳細

ターミネーターの鍵は毒を多量に生成して細胞を殺す能力であり、その毒を種子だけに限ることである。

これを達成するための計画は、綿の例では、通常には綿の種子の発育の後期に活性化する遺伝子のプロモーターを取り出し、発育の最後の段階で胚芽を殺す蛋白質を作るコーディング シーケンスに融合させることである。

ターミネーターの特許では、作者は綿のLEA(Late Embryogenesis Abundant)遺伝子のプロモーターを使っている。この遺伝子は最後に活性化されるものの一つである。種子がフルサイズになり、貯蔵油がほとんど蓄積され、母木を離れ、地中で芽を吹くまでの間の休眠期に備え、乾燥中になるまで、それの蛋白質は生成されない。もし加工された遺伝子が同じ表現(expression)のパターンであるならば、LEAプロモーターによって誘導される蛋白質は、大量に、種子の中だけで、しかも成長の後期に出来る。綿繊維は、種子の成長に連れ、種子の皮質が外側に成長したものなので、毒が働くまでに、綿の種子がほとんどの成長を成し遂げることは大事である。

さらに、綿の繊維が原料として取り除かれた後、人間と家畜の両方の食用にされる油と蛋白質を取るために、種子は絞られる。種子が死ぬまでに成熟するのでなければ、綿作物は農家にとってほとんど役に立たない。

毒について言えば、特許は幾つかの可能性に付いて述べているが、特許取得者たちは Saponaria officinalis という植物のリボサム阻害蛋白質(ribosome inhibitor protein, RIP)を推奨している。この蛋白質は微量で、全ての蛋白質の合成を阻害する。細胞はほとんど全ての活動に蛋白質を必要としているので、蛋白質を合成できなければ、すぐに死ぬ。特許によれば、RIPは植物以外には無害である。

種子特定プロモーター(seed-specific promoter)と毒のコーディング シーケンスを組み込むようなDNAの操作は、試験管の中でバクテリアに行われる。そして、既に良く使われている何種類かのやり方の一つによって、改造された遺伝子は綿の生体に組み込まれる。

しかし、これが総てではない。もしこれだけであるなら、遺伝子移転された生体は、成長のサイクルをへて種子の生成過程にくるが、それでおしまいである。農家に売るべき種子は生きている種子は手に入らない。

ターミネーターの特許は、毒の遺伝子が農家が作物を植え付けて長いこと経ってでなければ、活性化しない極めて賢い方法を提供する。そのトリックは、種子特定プロモーターと毒コーディング シーケンスとの間にDNAの一片を挿入して、蛋白質が生成されるのを阻害することである。

阻害DNAのどちらかの端には、特定の酵素、例えばリコビナーゼ(recombinase)と呼ばれる酵素、によって認識される、特別なDNAのかけらが組み込まれる。リコビナーゼがこれらのDNAのかけらに出会うと、DNAはそのかけらの外側で切り取られ、切り口は融合される。結果として阻害DNAは取り除かれる。これが起きると、種子特定プロモーターは毒コーディング シーケンスのすぐ隣になり、毒生成の機能を活性とすることが出来る。しかし、毒生成はすぐには起きない。毒は、LEAプロモーターが活性になる次の種子生成の過程が来るまでは、生成されない。

従って、リコビナーゼ酵素が働いた後、作物は発芽から正常に成長し、茎、葉、根、それに花が出来、受粉して種子が大方成長するまで育つ。そしていっせいに種子は死滅する。

これらがすべて達成できたとしても、もう一つの問題が残っている。それは農家に売るだけの量が出来るように、どうやって遺伝子操作された品種を何世代か育てるか、である。

ターミネーターの特許は、農家が種子を植え付ける直前までリコビナーゼが活性になるのを防ぐことにより、このジレンマを解消している。特許取得者は幾通りかの方法を挙げているが、中でも次の方法に重きを置いている。それはリコビナーゼ コーディング シーケンスを、全ての細胞で、常に活性であるプロモーターの隣に置くことであるが、そのプロモーターを抑止しておくのである。そのプロモーターは科学薬品処理により活性化させることが出来る。したがって、種子販売会社は、植え付けの直前に種子を処理して、始めてリコビナーゼが生成されるように出来るのである。

特許取得者が詳細に渡って説明している、抑止可能なプロモーター(repressible promoter)の一つは抗生物質のテトラサイクリン(tetracycline)によってコントロールされる。抑止蛋白質を常に作る遺伝子と、抑止蛋白質によって不活性化されるよう改造されたプロモーターを持つリコビナーゼ遺伝子を、綿に組み込んでおく。ほとんどの状況下では、抑止蛋白質はリコビナーゼ遺伝子に働き、リコビナーゼは生成されず、毒素遺伝子は抑制され、通常LEAプロモーターが活性である種子形成期間であっても、毒は生成されない。

毒素遺伝子を活性化するには、農家に販売される直前に、発芽しようとしている種子は、テトラサイクリンで処理される。テトラサイクリンは抑止蛋白質に働き、リコビナーゼの生成の阻害を防ぐ。リコビナーゼは生成され、阻害DNAを毒素遺伝子から切り離す。毒素遺伝子は毒を作ることが出来るが、種子の成長過程の最後までは実際には作らない。次世代はこのようにして殺される。

従って、綿でターミネーター効果を発揮するには、次の3つの遺伝子操作の要素が綿のDNAに移転されなければならない。

  1. 種子特定プロモーターによってコントロールされる毒素遺伝子、しかし、この毒素遺伝子はプロモーターとコーディング シーケンスの間に挟まれたDNAの一片によって抑制されている。
  2. 常に活性なプロモーターを持つ、抑止蛋白質コーディング シーケンス、それに
  3. 常に活性ではあるけれど、抑止蛋白質によって押さえられていて、テトラサイクリンにより活性化されるプロモーターを持つコビナーゼ コーディング シーケンス

実際に遺伝子を生体に移植するのはそんなに厳密な作業ではない。次の幾通りかの方法のうちどれが使われてもよい: 微細な針を使って遺伝子操作されたDNAを細胞核に注入する方法、細胞をDNAの中に浸しておき、電気ショックを与える方法、DNAを微細な金属片にくっつけてガンで細胞内に打ち込む方法、または改造されたビールスやバクテリアが細胞にDNAを感染させる方法。どのような方法でも、遺伝子操作されたDNAは細胞核に入り込み、植物の染色体に組み込まれなければならない。挿入された遺伝子の数と、植物の染色体のどの位置にそれらが配置されるかは予測が出来ず、それらの新しい遺伝子がどれだけうまく働くかは不測である。

DNAが相当数組み込まれ、適切な場所に配置されて効果を発揮する細胞を見つけるには多大な手間がかかる。基本的には全個体は、異種のDNAによって改造された細胞または組織から成長させなければならない。そして個々の個体は、新しい遺伝子の存在と機能について試験されなければならない。

うまく機能している新しい遺伝子を持った個体が見つかったら、それらは交配されて、後世代全部で双方の染色体にターミネーターが機能するのに必要な、全部の要素を持っている綿の品種ができあがる。販売するのに必要な大量の種子を作るために、これらの個体はさらに交配される。

ターミネーター技術は、種子生産者に、いつターミネーターが働き出すかを決めさせる能力を与えるものである。リコビナーゼが出来るまでは、綿は正常に発育する。リコビナーゼが生成されると、次世代の種は殺され、特許を取得した品種を守る。


ターミネーターを使うことにより、 派生するかもしれない幾つかの問題

この技術に関する特許は複雑である。私は多数の応用の可能性のうちただ一つだけを説明した。明らかに、特許技術の実施によって、生物学的にどのようなことが起きるか、予め総て知っておくことは出来ない。しかしながら、問題になるかもしれない幾つかの点はもう既に明らかにされている。(Ho 1998) ここでは私は幾つかをあげておく。

ターミネーターは他の植物に広がるか?

ターミネーターが近くにある同種の植物の種子を殺すことは、ある特定の条件下では、十分にあり得ることである。しかしながら、その効果は第一世代に限られ、他の世代に広がることはない。次のようなシナリオが考えられる: 農家がターミネーターの種子を植える時、その種子は既にテトラサイクリンによって処理されているので、レコビナーゼが働き、毒コーディング シーケンスは種子特定プロモーターの隣に位置していて、種子の発達の末期に活動する準備が出来ている。その種子は個体に育ち、花粉が出来る。全ての花粉は活動する準備ができた毒素遺伝子を持っている。もしターミネーターの作物が通常品種が植えられた畑の隣にあり、花粉が昆虫または風によってその畑に運ばれたとすると、ターミネーターの花粉によって受精された卵子はみな毒素遺伝子を一つ持っている。その遺伝子は種子の発達の末期に活性化され、種子は死ぬ。しかしながら、種子は多分正常に見えるであろうから、通常品種を育てている人は違いを見つけられないだろう。その種子が植えられて、発芽しなかった時に、始めて影響がはっきりとするのである。

死んだ個体が生殖することはないので、大多数の場合、毒の遺伝子はそれ以上後世代には伝播されない。しかしながら、ある特定の条件下では、毒の遺伝子は遺伝することがあり得ることを、後で検討する。

いずれにせよ、どこで起きるにしても、ターミネーターの品種の近くに畑をもっている農家にとって、死んだ種子は大問題だ。どれだけの種子が死ぬかは、作物の種類、品種、気候、それにどれだけ畑が近いか、などによって影響される雑交の程度により決まる。もし多くの種子が死ぬとすれば、近隣の農家にとって種子を保存することは無理である。もしわずかな種子が死ぬだけだとしても、それらはターミネーターで保護されている品種に組み込まれた毒やその他の蛋白質を持っている。これらの新しい「部品」は、ある特定の目的には種子を売れなくしてしまうかもしれない。


ターミネーターによって作られた毒をもった種子は食べても安全か

実のところ、種子の利用にあたっての毒の効果は深刻な疑問である。この件に関しては特許の8ページ目に書かれている。そこでは特許の申請者は次のように言っている。「商業用に育てられる綿では、最終的な種子の質に影響するので、選ばれた毒の遺伝子だけが使われる、、、、しかし、(食葉植物や、観葉植物、それに花卉産業のための作物など)種子の質が作物の商品価値に無関係ならば、どんな毒素遺伝子も受け入れられる。」

人間だけが種子と関連を持つ生き物ではないので、これは極めて危険な消去法の考え方である。例えば、食葉植物では、全ての作物が種子が成熟するまでに取り入れられるとは限らず、それは状況による。種子を食べたる鳥や昆虫、種子で繁殖するカビやバクテリアにある特定の毒はいかなる影響を与えるであろうか。もし食葉作物が毒で一杯の種子と一緒に畑に残され、種子が土に接した場合、どのような影響を土の生態系に与えるであろうか。作物の健康な成長には特定の生物種が必要なので、これらは重要な質問である。さらに、ターミネーターの花卉作物または観葉作物が、種子を使う似通った作物とたまたま近いところで育てられるかもしれない。そして交配が起きれば農家の知らない間に種子に毒が出来る。その毒は誰も知らない間に製品に入ってしまうかもしれない。例えば、観賞用のヒマワリはターミネーターを油種子品種に広げ、その毒が食用油またはヒマワリの種粉に紛れ込むかもしれない。

食用の種子中に特異な毒を作ることの他の潜在的な問題はアレルギーである。既に説明したRIP毒は、動物にとって、直接の毒ではないかもしれないが、アレルギー反応を引き起こすかもしれない。もし種子が食料全般の供給に混ぜ込まれたら、このような効果は追跡が難しくなるであろう。


死んだ種子は生きている種子と比べて異なった性質を持っているか

ターミネーターは発育の末期で種子を殺すことになっているが、他にどんな影響、もしそれがあるとしたらだが、があるかは不明である。死んだ種子は保存しやすいだろうか、しにくいだろうか。たぶん湿度の変化や、バクテリアやカビに犯された時に異なった反応をするかもしれない。もし死んだ種子が異なった反応をするとなれば、「二、三個の腐ったリンゴは樽全部を駄目にする」から隣人の作物の一部の種子を殺すことは、もっと問題かもしれない。

発育の末期で殺された種子は栄養の変化があるかもしれない。ほとんどの脂質と蛋白質は存在しているけれど、種子が悪化したり、重要な微少要素が欠けている可能性はある。例えば、食べ物の中の特定の分子の機能は理解され始められたところであり、病気の予防に重要な役割を果たすと思われる。これらの可能性は更なる研究を必要としている。


種子の植え付けの前に抗生物質で処理することは問題ではないか

もし種子会社が、毒素遺伝子の活性化のための連鎖反応を引き起こすために、テトラサイクリンを使うとしたら、種子会社は大量の種子をその抗生物質に漬けなければならない。基本的には農家によって植え付けられる全ての種子は処理されなければならない。一エーカーに何ポンドの綿の種子あるいは小麦の種子が必要だろうか、それから何エーカーの土地に植えるのだろうか。毒素が第一世代で出来ないように、種子は完熟してからテトラサイクリンで処理されなければならないので、実のところ、これが一体どのように働くか私は思い浮かべるのに苦労する。浸漬された種子を取り扱うのは私には難しそうに思えるが、多分簡単な方法があるのかも知れない。いずれにせよ、濃度が低くても、大量のテトラサイクリンを扱い、そして廃棄する必要があるし、農業用に大量の抗生物質を使うことは、既に医療分野での使用の脅威と見なされている。さらに、耐性バクテリア、残存または廃棄抗生物質が土壌の生態系に悪影響を与えるかもしれない。

またまた私は特許の消去法の考え方に戦慄を感じる。7ページの30行目に、特許の作者は、「テトラサイクリンは植物や動物に何ら悪影響を与えないので、それの存在は作物の正常な発育を妨げるものではないし、処理後に種子や作物に残留する量は、環境にさして影響を与えるものではない」と述べている。確かにテトラサイクリンは人間のような動物に直接影響を与えないことは事実であるが、間接的な影響は甚大なものがある。これは適切な消化から病原菌からの保護まで、我々の日常の活動は、微生物との極めて込み入った相互作用に依存しているからである。テトラサイクリンの処方箋と一緒に患者に渡される使用上の注意書きは、テトラサイクリンの使用は無害でないことの有力な証拠である。

植物も微生物に依存している。植物は相互作用網無しには正常に働かないし、テトラサイクリンのような物質の間接的な影響は重要だと証明されるかもしれない。


ターミネーターは遺伝子操作された生物が環境に広がるのを防げるか

明らかに、農家はターミネーターで遺伝子改造された作物(GMO)が周囲に広がったり、他の季節にいつのまにか種子から育ったりするのを欲しない。彼らはターミネーター作物が他の品種や近親種と遺伝子を交換することを欲しない。興味深いことに、ターミネーターは、GMOやそれらの遺伝子が環境に広がるのを防ぐ方法として提案されたのである。しかしながら、ターミネーターはそのような目的にはうまく働かないであろう。

第一に、テトラサイクリンの処理は100パーセント効果的ではないだろう。様々な理由により、いくつかの種子は反応しないかもしれないし、リコビナーゼを活性化するに十分なテトラサイクリンを吸収しないかもしれない。そのような場合、影響を受けなかった種子から育つ作物は、他と違いが無いかのように見えるが、機能していない毒素遺伝子を持った花粉を作るようになる。その花粉は、ターミネーターによって保護された、耐除草剤性を得るように遺伝子操作された蛋白質をもっている。もしこの花粉が正常な作物を受精させたとすると、毒は作成されないので、その種子は死なない。しかし、その種子は耐除草剤性の遺伝子を持っていて、それは後世代に遺伝する。それゆえ、GMOの性質は花粉によって環境に広がるのである。

もちろん、自家受粉したターミネーター系列の作物は、テトラサイクラインの処理が失敗し、鳥によって運び去られたり、次の季節に「自発的に」生育するとすれば、第二世代まで生存する

他の可能性は、活性化に成功したターミネーターの遺伝子でも、遺伝子の沈黙化(gene silencing)といわれる現象によって、毒素を作ることに失敗するかもしれない。他のGMOの実験では、まったく予期しないことに、時によるとかっては活性だった、移植された遺伝子が突然働かなくなることが発見された。ターミネーターの遺伝子を持った種子でこの現象が起きたとするなら、沈黙した毒素遺伝子をもった作物は、恐らく数世代成長して繁殖することが出来るだろう。したがって、ターミネーターや他の改造された遺伝子は将来に持ち越され、どれだけかの時が経った後、多分突然に効果を発揮するかもしれない。

GMOやそれらの亜種が意図せずに環境に広がるのを、ターミネーターに依存するのは非現実的である。「拡散」は、ターミネーターの遺伝子部品が性的繁殖の過程で並び直され、種子の一部には毒素がまったく無く、植え付けに使えるような特許の他の応用ではさらに起きやすいであろう。


生物は常に進化している。ターミネーターは突然変異を起こし、何か危険な性質を持つことはないだろうか。

すでに説明したように、もし作物が沈黙した毒素遺伝子を持っているならば、これらの遺伝子は突然活性化して、不意に後世代の種子を殺すことになるかもしれない。しかしながらその現象が起きた時、その原因がターミネーターであると断定するのは難しいかもしれない。

他の可能性はターミネーターが違った時期や作物の違った場所で活性化することである。幸いにしてそのような出来事は、作物が死ぬので一世代に限られる。しかし、農家にとって、GMOの不安定さと予測性の無さは既に経済的な問題になっている。遺伝子そのものも、複雑に自分自身と環境に関わっている生態系であり、遺伝子工学の単純で短絡的な理論に影響を与え得るのである。最近のエコロジスト(Ecologist)の記事ではこの問題を詳細に取り上げている。(Ho et al. 1998) .


最後の感想

ターミネーター技術を使うにあたり、私は幾つかの問題の可能性を見出した。私の分析はターミネーターの特許に記載されている応用のうち、たった一つに基づいている。私は、私が説明した特定の問題のうち幾つかは、種子産業界によって、実用化される前に解決されるものと信じている。しかしながら、予測されないあるいは想像もつかない問題が存在するであろうことも、私は確信している。不意をつかれるようなことが起きるであろう。しかし、ターミネーターがどんな生物学的な問題の可能性を持っているとしても、それらはターミネーターの経済、社会それに政治に与える影響に比べれば小さなものである、と私は考える。(RAFI 1998)


参考

Ho, Mae-Wan, 1998. Genetic Engineering: Dream or Nightmare? The Brave New World of Bad Science and Big Business. Gateway Books, Bath, UK.

Ho, Mae-Wan, Hartmut Meyer and Joe Cummins, 1998. The biotechnology bubble. The Ecologist 28, pp. 146-153.

Horstmeier, Greg D., 1998. Lessons from year one: experience changes how farmers will grow Roundup Ready beans in '98. Farm Journal, January 1998, p. 16.

Monsanto Advertisement, 1997. Farm Journal, November 1997, B-25.

RAFI-Rural Advancement Foundation International, 1998. This organization has written several press releases, communiques, and articles on Terminator Technology. These can be accessed at RAFI's web site at http://www.rafi.ca, or by writing to RAFI, 110 Osborne St., Suite 202, Winnipeg MB R3L 1Y5, Canada.

Rissler, Jane and Margaret Mellon, 1996. The Ecological Risks of Engineered Crops. The MIT Press, Cambridge, Massachusetts, US.

Rosenfield, Israel, Edward Ziff and Borin Van Loon, 1983. DNA for Beginners. Writers and Readers, US.

United States Patent Number 5,723,765: Control of Plant Gene Expression, issued on March 3, 1998 to Delta and Pine Land Co. and The United States Department of Agriculture. Inventors: M.J. Oliver, J.E. Quisenberry, N.L.G. Trolinder, and D.L. Keim.


米国農業省に抗議しよう

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http://www.rafi.org/

Translated by Kazuo Shiroki
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