週刊 ラチェルズ: 環境と健康 No. 622
RACHEL'S
ENVIRONMENT & HEALTH WEEKLY #622
RACHEL'S ENVIRONMENT & HEALTH WEEKLYの日本語への翻訳と配布は、発行元であるEnvironmental Research Foundationの許可を頂いていますが、翻訳内容のチェックまでは受けておりません。従ってこの翻訳はあくまでUnofficial Japanese Versionであり、Environmental Research Foundationは日本語版の内容に一切責任を負うものではありません。また日本語での問い合わせにも対応できません。正確な内容を必要とする人は英語の原文を参照されるようお願いします。 (ガイア21)
RACHEL'S ENVIRONMENT & HEALTH WEEKLY #622 ---October
29, 1998---
HEADLINES: SEEDS OF DESTRUCTION
Environmental Research Foundation
P.O. Box 5036, Annapolis, MD 21403
Back issues available by E-mail; to get instructions, send E-mail to INFO@rachel.org with the single word HELP in the message; back issues also available via ftp from ftp.std.com/periodicals/ rachel and from gopher.std.com and from http://www.monitor.net/rachel/ Subscriptions are free. To subscribe, E-mail the words SUBSCRIBE RACHEL-WEEKLY YOUR NAME to: listserv@rachel.org
フランケンポテト (原題は破滅の種子)
【あなたはもう遺伝子組み替え食品を食べている?】
1998年10月25日の NEW YORK TIMES の日曜版に掲載された Michael Pollanの Playing God in the Garden [1]には、遺伝子組み替えされた作物を、消費者が知らない間に既に食べていて、今後もそれが増えるであろうことが記されている。それは巨大な企業の危険なビジネスと、肥大した政府の意味を成さない政策の話でもある。
遺伝子組み替えされた作物はアメリカのマーケットに導入されてから既に4年になる。ある種のコーン、ジャガイモ、それに大豆は遺伝子操作されたものだ。
アメリカの食品の安全を守るFDA(U.S. Food and Drug Administration)は、遺伝子組み替えされた食品に、その旨を知らせる表示を要求していない。従って、マクドナルドでフレンチフライを食べたり、市販ののポテトチップを食べたとしたら、あなたは既にセントルイスに本社を置く巨大化学会社モンサント(Monsanto)によって開発された、遺伝子操作された食品を食べているかも知れないのだ。タイムズの記事は特にモンサントの、薄い皮で色が白いニューリーフ・スーペリアー(New Leaf Superior) というジャガイモに焦点をあてている。
【農薬として登録されたジャガイモ】
ニューリーフ・スーペリアーのジャガイモそのものは、コロラド芋虫(Colorado potato beetle)を毒殺するように遺伝子組み替えされているので、法的に EPA(U.S. Environmental Protection Agency)に農薬として登録されている。ニューリーフ・スーペリアーの全ての細胞にはコロラド芋虫にとって極めて毒性が強い蛋白質を生成する Bt(バシラス菌の一種 BACILLUS THURIENGENSIS)から取り出した遺伝子が入ってる。Btの遺伝子はニューリーフ・スーペリアーの全ての細胞に入っているので、ジャガイモそのものが農薬として登録されているのだ。
EPAは新しい農薬の認可権を持っていて、ニューリーフ・スーペリアーは多分人間にとっても安全だろうとみなしている。EPAはネズミにBtを食べさせて安全の確認をした。またニューリーフそのものは永いこと食べられてきているので、ネズミにとって安全なBtと、人間とって安全なニューリーフを掛け合わせたニューリーフ・スーペリアーは安全だろう、というのがEPAの論理だ。しかし、タイムズは外来の遺伝子を作物に組み込むことによって、どのような微妙なことが起きるか分からないので、安全とは言い切れない、という専門家の疑問の声を取り上げている。
【農薬としても食品としても表示の無い遺伝子組み替え食品】
スーパーマーケットで売られているモンサントのニューリーフ・スーペリアーには成分表が貼付されているが、遺伝子操作されていて、法的には農薬そのものであることは何も書かれていない。食品のラベルは通常FDAの管轄である。
【FDAとEPAのたらい回し】
FDAの役人がニューヨークタイムズに述べたところでは、モンサントのジャガイモは農薬であるので、FDAの管轄ではなく、それはEPAの仕事だとのことである。EPAが許可した農薬には、通常EPAの承認をうけた警告のラベルがついている。例えばBtのボトルには、Btを吸い込まないこと、傷口に触れさせないことが書かれている。しかし、モンサントの農薬ジャガイモについてはEPAは、それは食品であるので、ラベルはFDAの責任であるとしている。
しかしながらFDAは遺伝子組み替えされた食品がアレルギー誘因物質を含んでいるか、大幅なな変質(material change)がある時だけラベルが必要であり、モンサントがニューリーフポテトを農薬に変えたことは大幅な変質ではないと決定した、とタイムズに語った。従ってFDAのラベルは必要とされない。さらにFDAに権限を与える法(the Food, Drug and Cosmetic Act) によると、FDAは食品のラベルに農薬に関して触れることは禁止されていて、農薬のラベルはEPAの責任である、とFDAは言う。こうして役所のたらい回しが行われている。
【遺伝子組換された食品は業界の自主規制頼み】
幾つかの遺伝子組み替えされた作物は農薬として登録されておらず、FDAはこれらを管轄する権限を持つ。しかしながらタイムズによると、FDAは、「一般的に安全とみなされている」(GRAS、generally recognized as safe)ので統制の必要が無い食品のリストを持っている。1992年以来、FDAはモンサントのような会社自身に、遺伝子操作された新たな食品がGRASのリストに加えられて、統制を免れるべきかどうかを決めさせている。言葉を変えると、遺伝子組み替えされた食品のFDAの管理は自主規制であり、強制力を持っていない。
【モンサントに言わせるとそれはFDAの責任】
モンサントの重役はタイムズに、企業は食品の安全に責任を持たされるべきではないと語った。モンサントのコミュニケーション担当重役のPhil Angellは、「モンサントは遺伝子操作された食品の安全性の証明を強いられるべきではない。我々の仕事は出来るだけ沢山売ることであり、安全性の保証はFDAの仕事だ。」と言った。
まとめると、バイオテックの産業は開拓精神に囚われている。何でもありで、政府は積極的で奉仕的な参加者である。もしバイオテックの将来が、ここ50年来の化学農業の崩壊より悪い結果になったとしても、誰も驚かないだろう。
【有機農業の切り札:Bt】
モンサントのニューリーフ・スーペリアー ポテトは人間の健康にどんな結果が起きるか関係なしに、アメリカの農業に大きな影響を与えるだろう。
人造の化学農薬と肥料を出来る限り避けている有機農業の農民は、最後の拠り所の天然の農薬であるBtの粉末を時々少しだけ使う。この粉末にはBtは高濃度で存在せず、太陽光で分解するので、長期間もつこともない。従って害虫はBtには抵抗力をまだ持っていない。
【Bt耐性を産み出すBt入り殺虫ポテト】
しかし、Btはモンサントのジャガイモ畑全面に常に存在するので、害虫は常にBtにさらされるであろう。従って害虫が抵抗力を獲得し、Btに耐性を持つのは時間の問題である。
1945年以来、500種以上の昆虫が様々な殺虫剤に耐性を持つようになったので、抵抗力の獲得の仕組みはよく分かっている。モンサントの殺虫ポテトを食べた総ての芋虫が死ぬわけではない。何匹かの丈夫な虫は生き残る。そしてこれらの丈夫な虫同士が交尾すると新しい種類の芋虫が発生し、モンサントのポテトを食べて増殖するようになる。それが起きるとBtは農薬としての有効性を失う。そうするとモンサントは、コロラド芋虫を駆逐する新たな「画期的な製品」を売り出すだろう。しかし、アメリカの有機農業の農民はいったいどうしたらいいのだろうか。(ガイア21 注)
【有機農業をも駆逐する殺虫ポテト】
モンサントは私利のため、Btの天然の農薬としての有効性という公利を犠牲にしたことになるだろう。モンサントの科学者達はBtを含んだジャガイモはBtに耐性を持つ芋虫を産み出すだろうことを、タイムズ紙に認めている。彼らは彼らが一体何をしようとしているか知っている。彼らはBtを忍ばせたジャガイモを大量販売し、その過程で競争相手(有機農業農民)の、有効性が実証されている不可欠の道具を失わせようとしているのだ。彼らの戦略は輝かしく、容赦が無い。
【悪夢の繰り返し】
何十年もの間、モンサントと他の農業化学会社は、農民を合成されたケミカルに依存させるような、農業システムを徹底的に普及させてきた。USDAの熱意のある協力と共犯行為によって、その計画は素晴らしくうまくいった。アメリカでは1945年以来、化学殺虫剤の使用は33倍になり、1995年には50万トン(毎年1人あたり2kg)のピークを迎えた。殺虫剤耐性の昆虫の増加と消費者の食品残留農薬の危険に対する知識の広がりは、モンサントをして「現在の農業技術は継続不可能だ。」と最新の年次報告書で言わせた。モンサントはアメリカの農民を化学農薬の悪循環からバイオテックの悪循環へと乗り換えさせようとしているのだ。
【文明の遺産の私有化】
何千年もの間、農民はその年の収穫の一部を保存しておいて、翌年の種としてきた。モンサントは農民に毎年新しい種を買わせることにより、この古くからのやり方を変えさせるつもりだ。ジャガイモは種からは育てない。ジャガイモは、親芋の芽を植え付けることにより育てるのだ。モンサントの殺虫ポテトを買う前に、来年の植え付け用に一切ジャガイモを保存しないと約束する契約書にサインしなければならない。これは来年モンサントからもっと種芋を買うことを強制する。タイムズ紙によるとモンサントは通報者とピンカートン探偵社を使い、数百人の農民に対し、契約書の権利に従い法的処置を取った。
農民の首輪をもっと締め付けるためにモンサントはターミネーター[3]と呼ばれる新しい技術を準備している。ターミネーターテクノロジーは、税金を使ってアメリカ農務省(U.S. Department of Agriculture(USDA))とモンサントが買収した種子会社とが共同開発したものである。ターミネーターは遺伝子のグループで、どんな作物にも挿入可能であり、作物の種子を発芽不能にする。ターミネーター技術が広く使われるようになると、種子の生産のコントロールは農場から企業の本社に移り、農民は種子の供給を全面的に企業に依存するようになる。タイムズ紙は「ターミネーターは、自然界の最後の共有物であり、過去1万年以上に渡って文明が作り上げてきた作物の遺伝子を、モンサントのような企業が私有化することを可能ならしめる。」と要約していいる。輝かしく容赦が無い。
モンサントは遺伝子工学の新しい狙いは世界の飢えを満たし、モンサント自身過去40年に渡ってぞくぞくと作り出した農薬から環境を守るためだと、ヨーロッパ、アフリカとアメリカで数百万ドルをかけた宣伝をしている。[2] しかしながら、タイムズ紙はモンサントの新しい道は古い道に劣らず破滅的で、多分もっと悪いだろうという掘り下げをしている。
【畑のマイクロソフト?】
モンサントの主張では、遺伝子操作は、新しい作物を動かす「オペレーティング システム」を提供する。しかしその例えはあまり適切ではない。DOSやウィンドーズやユニックスのようなコンピューターのオペレーティングシステムは、コードを組むプログラマーに十分理解されている。一方遺伝子コードは創造主によって書かれており、いかなる人間であってもわずかな部分といえども理解していない。遺伝子操作された植物や動物を自然界に解き放つのは、めくら滅法撃つことであり、モンサントのかってのPCB(polychlorinated biphenyls)やエージェント・オレンジ(Agent Orange)の破局的な実験よりひどい結末になる可能性がある。[3]
タイムズ紙は、ニューリーフ・スーペリアー殺虫ポテトを産み出すために、モンサントはBt遺伝子を何千個ものジャガイモに挿入しなければならなかった、と報告している。それは挿入された遺伝子は、ジャガイモのDNAの予期されない場所に落ち着くことがよくあり、本来の殺虫性を持たなかったり、とんでもないものが出来たりするからである。「遺伝子の発現(gene expression)についてはまだ我々が理解していないことが沢山ある。」とはモンサントのジャガイモ子会社のネイチャーマーク(Naturemark)のダイレクターであるDavid Starkの控えめの言葉である。
【やはりエコシステム】
ハーバードの遺伝学者のRichard Lewontinは、モンサントが遺伝子操作された作物をオペレーティングシステムに比べるのは正しい比較ではない、とタイムズ紙に述べた。Lewontinによれば、遺伝子コードはエコシステムにより近い。「我々はいつでも介入して、何かを変えることは出来る。しかしどのような波及効果があるか、またはどのように環境に影響を与えるかは知る由も無い。我々は惨めなほど貧弱にしかDNAから生物がどう発達するか知らない。だから予想もしないショックを次々と受けても私は驚かない。」とLewontinは語った。
--Peter Montague
(National Writers Union, UAW Local 1981/AFL-CIO)
ガイア21 注: タイムズ紙によると、害虫がBtへの耐性を獲得するのを遅らせるために、EPAとモンサントは「耐性管理計画」(resistance-management plan)を作り上げた。その計画によると、畑の一部には通常の種類の作物を植え、耐性を持った個々の害虫が交尾して、耐性をもった新たな害虫種が生れるのを遅らせるのである。ニューリーフ・スーペリアーの場合、農民は畑の80パーセント以上に殺虫ジャガイモを植えることが出来ないと契約書に書かれている。モンサントはこれにより、コロラド芋虫がBt耐性を獲得するのに30年はかかると楽観している。しかし、この耐性管理計画自体が有効かどうかは疑問の上、あくまで自主規制であり、強制力は持たない。従ってコロラド芋虫は5年でBt耐性を持つだろうと予測する科学者もいる。
[1] Michael Pollan, "Playing God in the Garden," NEW YORK
TIMES
October 25, 1998, pgs. 44-51, 62-63, 82, 92-93.
[2] David Pimentel and others, "Ecology of Increasing
Disease,"
BIOSCIENCE Vol. 48, No. 10 (October 1998), pgs. 817-826.
[3] THE ECOLOGIST magazine devoted its most recent issue to
Monsanto; see "The Monsanto Files; Can We Survive Genetic
Engineering?" THE ECOLOGIST Vol. 28, No. 5 (Sept./Oct., 1998),
pgs. 249-324. E-mail: ecologist@gn.apc.org.
Descriptor terms: genetic engineering; biotechnology;
agriculture; farming; potatoes; corn; potatoes; pesticides; bt;
organic farming; fda; epa; terminator technology;
################################################################
NOTICE
Environmental Research Foundation provides this electronic version of RACHEL'S ENVIRONMENT
& HEALTH WEEKLY free of charge even though it costs our organization considerable time
and money to produce it. We would like to continue to provide this service free. You could
help by making a tax-deductible contribution (anything you can afford, whether $5.00 or
$500.00). Please send your tax-deductible contribution to: Environmental Research
Foundation, P.O. Box 5036, Annapolis, MD 21403-7036. Please do not send credit card
information via E-mail. For further information about making tax-deductible contributions
to E.R.F. by credit card please phone us toll free at 1-888-2RACHEL, or at (410) 263-1584,
or fax us at (410) 263-8944.
--Peter Montague, Editor
################################################################
| ガイア21 ホーム |
![]() |
translation by Kazuo Shiroki |
転載、配布などはご自由にどうぞ。その場合ご一報頂ければ幸いです。 インターネットで、役に立つ情報を共有しましょう。 |